
空港で飛行機に乗る際、搭乗橋ではなくバスで飛行機の近くまで移動したことはありませんか?
ターミナルからそのまま機内へ進めると思っていたのに、搭乗口からバスへ案内されると少し面倒に感じるかもしれません。
また、バスを降りた後は屋外を歩き、タラップを上って搭乗するため、雨の日や大きな手荷物を持っているときは大変です。
また、トラブルでもあったのか、LCCだからなのかと疑問に思う人もいるでしょう。
飛行機までバスで移動する主な理由は、主に次のとおりです。
- 搭乗橋のある駐機場が空いていない
- ほかの便の遅延により、使用予定の駐機場が変更された
- 駐機料や搭乗橋の使用料、地上支援における各種コストを抑えられる
- プロペラ機などの小型機には、搭乗橋のない駐機場が適している
- 次の出発まで時間が空き、駐機場を長時間使用する
バス搭乗は移動に手間がかかる一方、普段は窓越しに見る飛行機を間近で眺められる貴重な機会でもあります。
この記事では、バス移動になるそれぞれの理由を、駐機場やグランドハンドリングの仕組みとともに詳しく解説します。
屋外を安全に移動するための注意点や撮影時のマナーも紹介するので、特別な体験として楽しむための参考にしてください。
飛行機までバスで移動する「沖止め」とは?

空港で飛行機が駐機する場所は、航空業界では「スポット」と言います。
ターミナルの建物に接しており、搭乗橋を使って乗り降りできる場所がターミナルスポットです。
一方、ターミナルから離れ、搭乗橋が設置されていない場所はオープンスポットと呼ばれます。
オープンスポットに駐機している飛行機には、バスまたは徒歩で移動し、タラップを使って搭乗します。
このように、ターミナルから離れた場所へ飛行機を駐機させることは、一般的に「沖止め」と呼ばれています。
なお、但馬空港など小規模の地方空港などは、沖止めのみで搭乗橋がない場所もあります。
ですから、バス移動になったからといってトラブルが発生したのではなく、空港の混雑状況や運航効率などを考慮して、ごく一般的に実施されています。
飛行機までバスで移動するのはなぜ?

ターミナルスポットの数に限りがあるため
空港によっては、搭乗橋を備えたターミナルスポットの数が限られています。
出発便や到着便が重なる時間帯には、すべての飛行機をターミナルスポットへ駐機させることができません。
そのため、一部の飛行機をオープンスポットへ駐機させ、乗客をバスで案内します。
特に朝や夕方など、多くの便が集中する時間帯には、ターミナルスポットが足りなくなりやすく、バス搭乗になる可能性も高まります。
ほかの便の遅延で急きょ変更されるため
当初はターミナルスポットを使用する予定だった便でも、当日になってオープンスポットへ変更されることがあります。
たとえば、使用予定のスポットに駐機している前の便が遅延すると、次の飛行機が到着する時間になっても場所が空きません。
その場合、運航への影響をできるだけ抑えるため、空いているオープンスポットへ到着させることがあります。
自分が利用する便は定刻どおりでも、ほかの便の遅延や運航状況によってバス移動になる場合があるのです。
駐機料や搭乗橋の使用料を抑えるため
自動車で駐車場を利用すると料金がかかるように、飛行機を空港へ駐機する際にも料金が発生します。
搭乗橋を利用する場合は、空港によって別途使用料がかかることもあります。
オープンスポットを利用すれば、搭乗橋の使用料などを抑えられる場合があります。
運航コストの削減を重視するLCCでバス移動が多く見られるのも、その理由の一つです。
ただし、沖止めになるのはLCCだけではありません。
大手航空会社でも、空港の混雑状況や機体の種類、運航スケジュールなどによってオープンスポットを使用します。
プッシュバックせずに出発できる場合があるため

ターミナルスポットに駐機した飛行機は、自力で後退できません。
そのため、トーイングカーと呼ばれる専用車両を使って、機体を後方へ押し出すプッシュバックが必要です。
一方、十分な広さがあるオープンスポットでは、飛行機が自力で旋回して出発できる場合があります。
プッシュバックが不要になれば、専用車両や作業員を手配する費用を抑えられるだけでなく、出発作業の効率化にもつながります。
なお、関西国際空港の第2ターミナルはPeachが使用していますが、飛行機がプッシュバックせずに自力で旋回して出発できるように設計されています。
搭乗橋を設けないことで、グランドハンドリングにかかる費用の削減にもつながっています。
プロペラ機などの小型機に適しているため
プロペラ機をはじめとする小型機は、大型機と違ってスポット内で旋回ができます。
機体の大きさによっては搭乗橋が旋回時に翼と衝突してしまうことから、障害物が少なく飛行機が動きやすいオープンスポットの方が都合のよいケースがあります。
小型機を利用するとバス搭乗になりやすいのは、単にターミナルスポットが空いていないからではなく、その飛行機に適した場所が選ばれているためでもあります。
次の出発まで長時間空くため
到着した飛行機が、すぐに折り返して出発するとは限りません。
次の運航まで数時間空くこともあります。
夜遅い時間であれば、そのままターミナルスポットへ駐機しても、ほかの便への影響は比較的少ないでしょう。
しかし、多くの便が行き交う日中にターミナルスポットを何時間も使用すると、空港全体の回転率が下がってしまいます。
そのため、乗客が降りた後に、専用車両で飛行機をけん引する「トーイング」を行い、オープンスポットへ移動させますが、乗客の降機後に移動させる手間や運航スケジュールを考慮し、最初からオープンスポットへ到着させる場合もあります。
バス搭乗で気をつけたいこと

風に飛ばされやすい物はカバンに入れる
オープンスポットには、風を遮る建物がほとんどありません。
そのため、ターミナル周辺では気にならない程度の風でも、飛行機の近くではかなり強く感じることがあります。
帽子やストール、薄い上着などは飛ばされやすいため、バスを降りる前にカバンへ入れておくと安心です。
帽子を着用したまま移動する場合は、しっかりと手で押さえましょう。
飛ばされた物を追いかけて決められた動線から外れると、大変危険です。
無理に拾いに行かず、近くの係員に知らせてください。
不必要に走ったり、はしゃいだりしない
空港の地面は飛行機の重量に耐えられるよう、一般的な道路よりも非常に硬く造られています。
転倒すると大きなけがにつながる可能性があるため、不必要に走ったり、はしゃいだりしないようにしましょう。
飛行機を見上げたまま歩いたり、スマートフォンの画面に集中したりすることも危険です。
係員の誘導に従い、前方と足元を確認しながら移動してください。
降雪のある空港では凍結に注意する
雪が降る空港では地面の除雪や融雪剤の散布など、乗客が安全に歩けるよう対策が行われています。
しかし、すべての雪や氷を完全に取り除けるとは限りません。
気温や天候によっては、地面やタラップの一部が凍結していることもあります。
歩幅を小さくして慎重に移動し、タラップでは手すりを使いましょう。
特に大きな手荷物を持っている場合や、滑りやすい靴を履いている場合は、より注意が必要です。
誘導係員に写真撮影をお願いしない
飛行機を間近で見られると、機体を背景に自分たちの写真を撮りたくなるかもしれません。
しかし、乗客を誘導する係員は乗客と同じように、飛行機へ搭乗するための保安検査を受けているわけではありません。
そのため、保安上、乗客が機内へ持ち込むカメラやスマートフォンなどの手荷物に触れることができません。
また、係員には乗客を安全に機内まで案内する役割があります。
カメラマンをお願いしたり、撮影のために手荷物を預けたりしないようにしましょう。
バス搭乗におけるおすすめポイント
バス移動は、搭乗橋より時間や手間がかかることがありますが、ターミナルスポットでは味わえない魅力もあります。
最大のおすすめポイントは、飛行機を間近で見られることです。
ターミナルの窓越しでは分かりにくい機体の大きさを、地上から実感できます。
エンジンや翼、タイヤなどを近くから眺められるのも、オープンスポットならではです。
タイミングによっては、飛行機の周りで働くグランドハンドリングスタッフや、運航を支える特殊車両の作業風景を見られることもあります。
タラップを一段ずつ上って機内へ入る体験にも、搭乗橋とは違った特別感があります。
写真は決められた動線の範囲内で撮影する
飛行機を間近で見られる貴重な機会なので、せっかくならカメラに収めてみてください。
ただし、撮影は決められた動線の範囲内で行いましょう。
飛行機へ近づいたり、写真を撮るために列から大きく外れたりする行為は危険です。ほかの乗客の通行を妨げないよう、短時間で撮影することも大切です。
飛行機を背景に自分たちの写真を撮りたい場合は、同行者やほかの乗客にお願いするのがおすすめです。
私も空港係員時代に撮影を頼まれたこともありましたが、できない旨と乗客同士での撮影をおすすめすると、お互いに楽しそうに撮影していました。
まとめ
飛行機までバスで移動するのは、搭乗橋のあるターミナルスポットが不足している場合だけではありません。
駐機料や搭乗橋の使用料を抑えるため、小型機を効率よく運航するため、ターミナルスポットの回転率を維持するためなど、さまざまな理由があります。
ほかの便の遅延により、当日になって急きょオープンスポットへ変更されることもあります。
屋外を移動する際は、風で飛ばされやすい物や転倒、雪国での凍結に注意が必要です。
係員の誘導に従い、決められた動線から外れないようにしましょう。
少し不便に感じるバス搭乗ですが、普段は窓越しに見る飛行機を間近で見られる貴重な機会でもあります。
安全を最優先にしながら、搭乗橋とは異なる景色や特別感を楽しんでみてください。
それでは良い旅を。



