空港で飛行機を誘導するマーシャラーとは?【グラハンのお仕事】

空港で飛行機が駐機場へ入ってくるとき、パドルや誘導灯を振って合図を送るスタッフを見たことはありませんか?
それは飛行機を誘導する人のことで、従事するには「マーシャラー」の資格が必要です。

近年は「VDGS(Visual Docking Guidance System)」という自動誘導装置の導入が進んでいますが、すべてが自動化されているわけではありません

特にVDGSが設置されていない空港やオープンスポットでは、今もマーシャラーによる誘導が不可欠です。

この記事ではグランドハンドリング(グラハン)の中でも花形とされる、マーシャラーの仕事を詳しくご紹介します。


マーシャラーとは?

マーシャラーは飛行機を所定の位置に正確かつ安全に停止させるため、ハンドシグナルでパイロットを誘導します。

飛行機が誤った位置で停止してしまうとPBB(搭乗橋)が機体まで届かなかったり、機体や設備に損傷を与えたりする危険があります。
マーシャラーはそうした事故を防ぐために、一瞬の判断力と高い集中力で誘導を行う責任重大な仕事です。

また機種によっては誤差の許容範囲が非常に狭く、わずかなズレも許されません
そのためより慎重かつ的確な技術が求められます。特に大型機を真正面から受け止める瞬間には、その迫力と緊張感が一気に押し寄せてくるような感覚になります。


また新人の頃に一度は戸惑うのが、誘導しているうちに左右どっちに振のか、わからなくなる問題。

先輩
先輩

迷ったら飛行機の気持ちになれ

つまり機体を左に動かしたければ、自分の左手を振る。右に動かしたければ右手を振る。
自分がパイロットになったつもりで動きを考えると、自然と正しい方向がわかるという実践的かつちょっと可愛いアドバイスでした。


VDGSとの違いとは?

近年、主要空港では「VDGS(Visual Docking Guidance System)」が導入されているスポットが増えてきました。
これは飛行機の進入速度や停止位置を自動で判断し、モニターに指示を表示して誘導する装置です。

ただし以下のような状況では、今もマーシャラーによる誘導が必要です。

  • VDGSが設置されていない地方空港やLCC専用ターミナル
  • ターミナルスポットが混雑していて臨時スポットを使うとき
  • オープンスポット

つまりすべてが自動で済むわけではなく、マーシャラーの存在は今後も必要不可欠なのです。


マーシャリングカーの出番もある

使用する駐機場によっては「マーシャリングカー(誘導車)」に乗って、飛行機を誘導します。

特に大型機の場合コックピットの位置が高いので、地上で立ったままの誘導では合図が見えにくく、機体からある程度後方に下がることで視認性を確保しますが、駐機場によっては後ろに下がるスペースがない場合もあります。

そんなときに便利なのがマーシャリングカーで、軽トラックの荷台にリフトがあるイメージです。

高い場所から誘導することでコックピットと目線が近くなり、停止線も見下ろす形で視認できるため、とても誘導しやすくなります。

ただしデメリットもあり誘導後は作業台を降ろして地上に戻る必要があるため、次の作業工程に移るまで少し時間がかかるという点です。
その場の状況に応じて作業効率と安全性のバランスを考えながら、仲間と業務を分担して使用しています。


パイロット、実はあまり見てない?

真意は不明ですが、マーシャラーの誘導って実はあまり見られていない?と感じることも多々ありました。

先輩に言われたのは「センターラインから少しズレてても、そのまま入ってくるから気にしないで。本当にやばいときは緊急停止の合図を送ってね。」という言葉でした。

一方で海外の航空会社のパイロットは、忠実にマーシャラーの指示に従う傾向があります。
逆にセンターラインに上手く乗せられなかったり、斜めになった機体を修正できる距離が少なかったりすると非常に焦りますが、誘導している感はものすごくあります
さらに上手く誘導できた時にコックピットからノリノリでサムアップをしてくれる機長だと、さすが海外だなぁと思えて嬉しさもひとしおです。

こうした違いを肌で感じられるのも、マーシャラーの面白さのひとつです。


まとめ|グラハンは飛行機を動かす“地上のプロ”

飛行機を操縦するのはパイロットですが、地上で飛行機を誘導するのはグラハンの花形です。

実際グラハンに憧れるきっかけが「マーシャラー」だったという人は非常に多く、私自身もそのひとりです。

大きな飛行機を正面から受け止め誘導するその姿には、何とも言えないかっこよさと誇りがありました。

もちろん今は人手不足や効率化の観点から、誘導の自動化もやむを得ない時代です。
ですがその分だけマーシャラーという存在に憧れを抱く人が減っていくのかもしれないと思うと、どこか寂しさもあります。

それでも機械にはできない人の判断が求められる現場は、今も確かに残っています

空港で飛行機を見る機会があれば、ぜひマーシャラーの姿にも注目してみてください。
そこにはプロフェッショナルとしての誇りが詰まっています。

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