
空港カウンターで預けた手荷物はソーティング場と呼ばれる所に集められ、コンテナやトラックで駐機場へと運ばれます。
しかしこの通常ルートを通らず、特別ルートで運ばれる荷物があることをご存じでしょうか?
この記事では手荷物が特別ルートで搬送される3つのケースと、現場で実際に起きたエピソードをご紹介します。
どんなときに手荷物が特別ルートで運ばれる?
空港内では、状況に応じて手荷物を個別に搬送することがあります。代表的な例が以下の3つです。
■ 開披検査された手荷物
保安検査で不審な点が見つかると、搭乗口に持ち主を呼び出して荷物の中身を確認する「開披検査」が行われます。
空港でこんなアナウンスを聞いたことはありませんか?

スタッフ
お預かりした荷物について確認したいことがございます。
〇番搭乗口までお越しください。
私も過去にカメラのバッテリーを抜き忘れて呼ばれたことがあります。
なお検査が終わると、その荷物は個別に搬送されます。
■ 空席待ちの乗客の手荷物
空席待ちで直前に搭乗が決まった場合、預け荷物の搬送タイミングがギリギリになることも。
この場合スタッフが手で持って急ぎ搬送する必要があります。間に合わせるためのスピード勝負です。
■ 搭乗口で回収した手荷物
満席の便では、機内の収納スペースが足りなくなることがあります。
そのため搭乗口で「お手荷物のお預けにご協力ください」と呼びかけることがあります。
ここで回収した手荷物は通常の預け荷物と違い、搭乗口から直接搬送されます。
これを現場では「バゲ狩り(バゲージ狩り)」と呼んでいます。
PBBの構造によっては搬送にも工夫が必要

PBB(搭乗橋)には、手荷物搬送用の専用通路はありません。
そのためエレベーターや階段を使って地上まで手で運ぶ必要が出てくることもあります。
しかもPBBの階段は揺れやすく大きな荷物を持って手すりがつかめない状態では、滑落や転倒の危険も。
天候が悪い日や便の本数が多い日は、作業の負担もさらに増します。
【体験談】まさかの19個!?バケツリレーと助け合いで乗り切った日
ある日、手荷物について無線連絡が入りました。

PBBから手荷物が出るので取りに来てください。
全部で19個あります。
通常1〜2個、多くても3個くらいなので、一瞬聞き間違いかと思いましたが本当に19個。
出発時刻が迫っていて、対応できるのは私のみの状況。
お手上げ状態だったところ、無線を聞いていた仲間たちが応援に来てくれました。
部署の垣根を越えて集まったメンバーで、PBBの階段をバケツリレー方式で荷物を次々に搬送。
さらに空いていたトラックを回してくれたスタッフもいて、地上に集めた荷物を一気に機体まで運ぶことができました。
おかげで全ての荷物を時間内に積み込み、定時出発を実現。
立場や部署に関係なく支え合える空港の現場のチームワークに、改めてグラハンが好きだと実感した瞬間でした。
まとめ|スムーズな運航のためにご協力を
飛行機に乗るとき預けた荷物がどんなルートで運ばれているかを気にする方は少ないかもしれません。
しかしその裏では、安全・確実に届けるための工夫とチームプレーが日々行われています。
ただしこうした特別ルートでの搬送は、無いに越したことはありません。
- 保安検査で引っかかりそうな物は入れない
- 混雑が予想される便では、できるだけ早めに手荷物を預ける
このようなちょっとした配慮が現場の負担を減らし、全体のスムーズな運航につながります。
搭乗口で「お預けのご協力をお願いします」と案内されたら、PBBも覗いてみていただけると嬉しいです。