【テーマパークとの違い】富士急ハイランドの事故で感じた違和感

ひとりごと

2025年2月、富士急ハイランドの人気アトラクション「ええじゃないか」で、点検作業中の男性従業員が車両とレールの間に挟まれ死亡する事故が発生しました。事故当時、複数のスタッフが点検を行っていましたが、車両を動かした従業員は「人がいるとは思わなかった」と話しており、ヒューマンエラーが関与している可能性が高いとみられています。私は約10年前にテーマパークで働いており、安全教育は非常に厳しかったことを覚えています。従業員時代にに富士急ハイランドに客として遊びに行ったこともありましたが、その時の違和感と、いかに自身の職場が恵まれていたかをまとめてみました。

事故概要

2025年2月28日、山梨県富士吉田市の遊園地「富士急ハイランド」で、ジェットコースター「ええじゃないか」の点検作業中に従業員の男性が死亡する事故が発生しました。

事故当時、29歳の男性従業員は乗客の乗降口付近に停止していた車両の下にもぐり込み、車輪付近の点検を行っていました。 ​しかし、同僚の従業員が「人がいないと思って車両を動かしてしまった」と述べており、これにより男性が車両とレールの間に挟まれたと見られています。

事故を受けて、富士急ハイランドの松村代表は記者会見で「貴い命を失ってしまった。関係者にお悔やみ申し上げる」と述べ、原因究明に努める意向を示しました。 ​2025年2月28日現在、警察と関係機関が詳細な事故原因を調査中です。この事故により、「ええじゃないか」の運行は当面の間休止されています。​

【テーマパークスタッフとして】富士急ハイランドで感じた違和感

各施設ごとにルールや安全基準が異なるので一概には言えませんが、カルチャーショックを受けることもありました。

①FUJIYAMAの出発時のハイタッチ

FUJIYAMAは1996年に誕生し、富士急ハイランドの看板アトラクションとっても過言ではありません。宙返りの無い王道の大型コースターとして4つの世界記録に認定されていいます。

そんな場所でビックリしたのが、出発する時に走行中のコースターにいる乗客と従業員がハイタッチをする姿。というのも私の職場では、たとえ動いていなくても出発合図が出た乗り物や、その乗客に触れることは御法度でした。いつ出発してもおかしくない状態なので、客に手を掴まれたら大事故に繋がるからです。もしハイタッチを求められたら、名残惜しそうに笑顔で手を振り続けなさいと言われたくらい。
だからまさにFUJIYAMAは走行しながらハイタッチをしていて、ゾッとしたことを覚えています。

②「ええじゃないか」での靴を脱いで乗るルール

どんなアトラクションでも乗車に関するルール(身長○○cm以上とか)があるのですが、そのテーマパークの共通ルールとして、「靴を履いていない人」は乗れませんでした。これこそ施設による部分だと思いますが、私の職場では緊急避難の際に怪我をしてはいけないという理由で裸足NGでした。ええじゃないかは遠心力で脱げてしまって、飛ぶ方がむしろ危険って判断だったんでしょうね。確かにスニーカー当たったら相当痛そう…

③作業区域に人がいる状態で乗り物を動かせたこと

これは当時の職場では考えられない事象で、アナログな手法ではありましたが人がいる状態で乗り物が動かせない工程が複数ありました。改めて考えると面倒ではあったものの、よく出来たルールだったなと思います。ここでは当時の職場の仕組みを簡単にご紹介します。

今回の事故は点検中でしたが、従業員がレールの近くに行くのは点検だけではありません。避難訓練や掃除、走行中の落とし物捜索など多岐に渡ります。その際、全ての停止ボタンを押して、全員が戻ってくるまで解除ができない仕組みでした。

まずボタンが3種類あります。
乗り場の停止ボタン
→普段からよく使う
走行中の乗り物の停止ボタン
→危険行為を発見した時など、たまに使う
緊急停止ボタン
→全ての電気系統を遮断して強制的に止める最終手段で、営業中に使うことは本来あってほしくない

これらを全て押して③にカバーをして、南京錠をかけます。

※イメージ

さらにその南京錠の鍵をアタッシュケースに入れて、レールの近くで作業をする人全員がその箱を施錠します

※イメージ

各々その鍵を持って作業をするわけです。なので全員が戻らないと鍵も取り出せないし、ボタン解除もできないわけです。もちろんスペアキーもないので、紛失すれば見つかるまで探し続けます

アナログですけど、よくできていると思いませんか?
だからこそ富士急ハイランドがどんなルールだったかにせよ、防げる手段を知っている身からすると、今回の事故は居た堪れない気持ちになります。

ええじゃないかで感動したポイント

出発前の従業員による安全確認が、トリプルチェックだったことです。アトラクションの特性上かもしれませんが、どこのテーマパークや遊園地でも多くてダブルチェックまでが定番です。その中で3人からチェックを受けるのは出発前のドキドキがありながらも、どこか安心感がありました。

人間はミスをする生き物:ヒューマンエラー対策が必須

最後にどれだけ注意していても、経験を積んでいても、完全にミスをゼロにすることは不可能です。だからこそ、ヒューマンエラーを前提とした対策が必要になります。

たとえば航空業界では、エンジンが1つ停止しても飛び続けられるように、あらゆるバックアップが用意されています。パイロットが誤操作をしても問題が起こらないように、システムが多重化された仕組みになっています。このように、一つのミスが重大な事故につながらないよう、いくつもの安全策が組み合わされているのです。

これは、私たちの日常生活や仕事にも当てはめることができます。ダブルチェックの習慣をつける、重要な判断は複数人で行う、万が一のためのリカバリープランを用意する。こうした工夫を積み重ねることで、リスクを減らし、大きなトラブルを未然に防ぐことができます。

ヒューマンエラーは避けられませがカバーする仕組みを作ることで、私たちはより安全に安心して過ごせるのです。また、ええじゃないかを超えるスリルと爽快感を味わえるアトラクションは日本全国どこにも無いと思っていますので、運営再会を心待ちにしたいところですね。

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