
飛行機のドアも閉まって出発かと思いきや、なぜか動かない。
しばらくしてもプッシュバックが始まらず、「もう準備できてるのに、なんで?」とイライラした経験はありませんか?
そんなとき、もしかしたらその原因は「フローコントロール」かもしれません。
フローコントロールとは?
「フローコントロール」とは、簡単にいえば空の渋滞整理です。
航空機は多数の便が同じ空港を使い、同じ空域を飛びます。これを自由に飛ばしてしまうと、上空や滑走路が大混雑してしまいます。
そのため航空管制官が出発便のタイミングを調整し、空の渋滞を防ぐのが「フローコントロール」です。
この指示が出ていると飛行機は出発準備が完了していても、離陸の順番が来るまで地上で待機することになります。
なぜ待機が必要になるの?

よくある理由としては、次のようなケースがあります。
- 到着空港が悪天候で混雑している
- 上空を飛ぶルートにすでに多くの機体がいる
- 出発が一時的に制限されている
- 周囲の空港と時間帯が重なり、便が集中している
- 上空での待機による無駄な燃料消費を避けるため
実はこれが非常に重要です。
飛行機は上空での待機中も、多くの燃料を消費します。
それなら最初から地上で出発を調整したほうが、結果的に安全かつ効率的というわけです。
グラハン時代にもよくあった「フローコントロール」
私がグラハン(グランドハンドリング)をしていた頃も、「○○便はフローコントロールです」という無線連絡はよく耳にしました。
国内線ではそこまで多くありませんでしたが、中国行きの国際線では本当によくありました。
特に上海や北京などの大規模空港が到着地の場合、現地の空域が混雑していて出発が制限されるのは日常茶飯事でした。
搭乗が終わっていて一向にドアが閉まらないと、嫌な予感がしてきます。
そんな状況で「フロー入った」と言われると、「やっぱり」とあきらめモードに。
新しい出発時刻は設定されず待つしかないので、プッシュバックを行うトーイングカーの中でみんなで雑談タイムです。
しかし油断していると、いきなりその時がやってきます。
フローの解除はアンチコリジョンライト(胴体2か所の赤いライト)がパッと光る瞬間。

それが点灯したらパイロットは管制塔にプッシュバック許可のリクエストをするので「出発」の合図。
大急ぎで車から飛び出して慌てて持ち場へ戻りますが、あのワチャワチャもいい思い出です。
「動かない=何かがおかしい」ではない
飛行機が出発しないと、どうしても不安や苛立ちが出てきます。
でもフローコントロールが入っているということは、それだけ空が混んでいるということ。
そのまま飛び立っても結局は上空待機になってしまうなら、燃料をなるべく使わずに地上で待つ方がずっと安全で合理的です。
まとめ:フローコントロールは“空の安全”を守る大事なしくみ
私たち乗客からすると、「動いてくれれば早く着くのに」と思ってしまいますよね。
しかし航空業界では、早さよりも安全が最優先。
フローコントロールは、まさにその象徴です。
空の交通整理によって事故のリスクを減らし全体の流れを整え、結果的にスムーズな運航が実現されています。
イライラしたときこそ「今、安全のための調整がされてるんだな」と思えたら、少しだけ気持ちが軽くなるかもしれません。
次に出発しない機内に遭遇したときは、「フローコントロール」の存在を思い出してみてくださいね。