飛行機に乗っていると、こんなアナウンスを聞いたことはありませんか。

ドアモードをアームドに変更してください
もしかしたら一瞬のことで聞き流しているかもしれませんが、この「ドアモード」の操作は機内の安全に直結する重要な業務なのです。
飛行機の出入り口となるドアは緊急時には脱出用シューターが瞬時に膨らむ仕様になっており、正しく作動させるために客室乗務員(CA)が毎回操作をしています。
その切り替え操作のことを「ドアモードの変更」といい、通常時も緊急時も安全に使用するためにミスは絶対に許されません。
今回は元グラハンとして実際に経験したエピソードも交えながら、ドアモードの仕組みと設定を毎回切り替える理由をわかりやすく解説していきます。
ドアモードとは?

飛行機のドアには非常時に自動で脱出用シューターを展開する機能が備わっています。
機種によって多少呼び方は異なりますが多くの飛行機で、
- スライドが展開する状態を「アームドモード」
- スライドが展開しない状態を「ディスアームドモード」
と呼んでおり、本記事でも同表現で記載をすることとします。
ですので出発前には「アームド」に、到着後にドアを開ける前には「ディスアームド」に戻す操作が必要です。
なお緊急脱出の訓練に関する記事はこちら。
操作するのは誰? どうやってやるの?
この設定を行うのは客室乗務員(CA)です。
ドア付近にある専用の棒やハンドルでモードを切り替えたあと、CA同士でダブルチェックをします。
機種や航空会社によって多少言い回しが異なりますが、以下のような表現が使われています
- 「ドアモードをアームドに変更してください」
- 「ドアモードをオートマチックポジションに変更してください」
- 「バーセット」
モードを間違えるとどうなる?
もしアームドのまま地上でドアを開けてしまうと、ドアと一緒に非常用の脱出スライドが爆発的な勢いで展開します。
スライドは瞬時に膨らむ仕組みで、誤って展開してしまうと以下のような恐れがあります。
- 機体や搭乗橋を損壊
- 地上スタッフが巻き込まれる危険
- 一度でも展開したスライドは交換が必要
- 欠航になる
実際の現場でも間違えたケースはあります。
CAがアームドのまま開けてしまった
ある日定刻どおりに出発準備を終えてPBB(搭乗橋)も離脱し、まさにプッシュバック直前というタイミングでした。
ところがその直後に機内の不具合が発覚し、再びドアを開けることに。
その頃には既にドアモードは「アームド」に変更済みで本来であれば、「ディスアームド」へ切り替えてから外にいる地上係員にドアオープンの指示を出す必要があります。
しかしその手順を逸脱してしまい、
「ボンッ!」という大きな音とともに、脱出スライドが飛び出してしまいました。
運良くスライドは何かに引っ掛かって完全に膨らみませんでしたが、その飛行機は使えず欠航に。
けが人が出なかったのが、不幸中の幸いです。
まとめ|ドアモード変更のアナウンスを聞いてみよう
飛行機の「ドアモード」とは、非常用スライドを作動可能な状態にするか解除するかという設定のこと。
これは単なるスイッチ操作ではなく、乗客全員の命を守るための重要な安全手順です。
次に飛行機に乗ったときアナウンスが聞こえたら、その裏で行われている安全確認にぜひ思いを馳せてみてくださいね。