
2025年7月、ANA(全日本空輸)がモバイルバッテリーに関する機内ルールを改定しました。
これによりモバイルバッテリーは座席上の収納棚に入れてはいけないこと、さらに機内での充電は必ず目の届く場所で行うことが明記されました。
背景には2025年1月に発生した、韓国LCC・エアプサン機内での火災事故があります。
棚に収納されたカバン内のモバイルバッテリーが突然発火し、機体の天井が焼け落ちるという深刻な事態となりました。
なおANAでの事故以前の2024年4月からFire Resistant Bag(耐火袋)を全機に搭載済みであり、発火時の備えもすでに実施済み。
さらに中国では3C認証がないモバイルバッテリーの国内線持ち込みを禁止するなど、国際的にも規制が厳しくなっています。
スマートフォンの必需品であるモバイルバッテリー。
この記事では今回の新ルールを中心に、持ち込みはできるのか・どこに入れるべきか・何に気をつけるべきかをわかりやすく解説します。
ANAが明記した新ルールとは
ANAでは以前から「モバイルバッテリーは預け入れ不可・機内持ち込みのみ」としていましたが、今回の改定で以下の2点が新たに明文化されました。
ANAの新ルール(2025年7月改定)
- モバイルバッテリーを座席上の収納棚に収納しないこと
→ 発煙・発火が発生しても発見が遅れ、初期対応ができない恐れがあるため。 - 機内での充電は、常に状態が確認できる場所で行うこと
→ テーブル上など目視できる場所で。バッグ内や棚の奥など、見えない場所での充電は禁止。
これらは国土交通省航空局と定期航空協会がリリースした安全対策に基づくもので、今後は他社にも広がる見込みです。
エアプサン機内での火災事故が決定打に
2025年1月、韓国LCC「エアプサン」の機内でモバイルバッテリーが発火する事故が発生しました。
火元は座席上の手荷物棚に入っていたカバンの中のモバイルバッテリー。
炎は棚の内部から天井にまで燃え広がり、機体の屋根部分が大きく焼け落ちる損傷が生じました。
事故は離陸前の駐機中に起きたため、乗客185人・乗員6人の計191人は全員無事。
しかし飛行中だった場合には制御不能となるリスクもあり、「大惨事寸前」と呼ばれるほどの深刻なインシデントでした。
事故を受け、エアプサンはモバイルバッテリー入りのカバンを棚に収納することを全面禁止。
今回のルール化も、こうした事故を受けての取り組みといえます。
モバイルバッテリーは預け入れできるの?
結論:絶対にできません。預け入れは禁止されています。
リチウムイオンバッテリーは発煙・発火のリスクがあるだけでなく、貨物室内では異常に気づけず、初期対応もできません。
そのため国際ルールでも「機内持ち込み限定」と定められています。
誤って預けた場合…
- 空港の館内放送で呼び出される
- 荷物からの取り出しが完了しないと出発しない
くれぐれも、うっかりスーツケースに入れたままにしないよう注意が必要です。
Fire Resistant Bagは事故前からANA全機に搭載
ANAではモバイルバッテリーの発火事故に備えて、2024年4月からFire Resistant Bag(耐火袋)を全機に搭載済みです。
Fire Resistant Bagとは?
発熱したモバイルバッテリーなどを安全に密封し、火や煙の拡散を最小限に抑えるための耐熱・耐炎性の袋です。
機内の被害を抑えるための初動対応装備として、重要な役割を果たします。
この耐火袋は現場の客室乗務員の声をもとに開発された備品で、販売もされています。
しかし最低ロット50枚からの販売となっており、主に企業や団体向けです。
ANAは事故前からこうした装備を導入しており、「発生後の備え」についても万全の体制を整えています。
海外ではさらに厳しいケースも|中国は3Cロゴ必須
日本ではルールを守れば持ち込み可能ですが、海外ではさらに厳しい規定を設けている航空会社や国もあります。
海外によくあるモバイルバッテリー規制
- 100Wh(約27,000mAh)を超えるバッテリーはNG
- 2個までなど、個数制限あり
- USB付きスーツケースのバッテリーが着脱不可の場合、持ち込みNG
中国国内線では3Cロゴが必須に
中国では2025年6月28日より以下のモバイルバッテリーの国内線持ち込みが正式に禁止されています。
- 3C(CCC)ロゴがない製品
- ロゴが不明瞭な製品(印字の消え・剥がれ等)
- リコール対象の製品
3C認証とは「中国強制製品認証(China Compulsory Certification)」の略で、日本でいうPSEマークのような安全認証マークです。
中国国内線を利用する予定のある方は、使用中のモバイルバッテリーに3Cロゴがあるかを必ず確認しましょう。
まとめ|持ち込みできるけど、正しい「扱い」が必須に
ANAのルール改定により、モバイルバッテリーの機内持ち込みは引き続き可能ですが、「どこに入れるか」「どう使うか」といった扱い方に対する安全意識の徹底が求められる時代になりました。
ポイントまとめ
- モバイルバッテリーの持ち込みはOKだが棚収納は禁止
- 充電は目の届く場所でのみ実施可能
- 受託手荷物への収納は禁止(これまで通り)
- ANAは2024年4月からFire Resistant Bagを全機に搭載済み
- 中国では3Cロゴがない製品は国内線持ち込みNG
モバイルバッテリーは「便利」だけでなく、「危険性」も併せ持つ製品です。
空の旅を安全に楽しむために、今一度、自分の持ち物と使い方を見直してみてください。