雪かきができない飛行機の除雪方法とは?

空港

冬になると積雪のある空港では雪との戦いが始まります。

特に北海道や東北、北陸の空港では、雪が滑走路や航空機に積もることで運航に大きな影響を及ぼします。

自宅の駐車場や屋根の雪かきはスコップや除雪機を使うでしょうが、飛行機はそうはいきません。

お湯で希釈した除雪液を撒いて雪を溶かし、さらに防雪液をまいて積雪を防ぐのが飛行機の除雪です。

厳しい環境でも飛行機が安全に飛び立てるのは、グランドハンドリングスタッフや整備の涙ぐましい努力があるからです。

本記事では空港で行われている「飛行機の除雪」について、その方法や特徴をわかりやすく解説します。


飛行機の除雪は何のために必要?

飛行機に雪が積もった状態では、空力性能が大きく損なわれます。

たとえば翼に雪や氷がついたままだと揚力が十分に得られず、離陸できなかったり、最悪の場合バランスを崩して墜落の危険すらあるのです。


そのため、出発前の機体には必ず「除雪(De-icing)」と「防除氷処理(Anti-icing)が施されます。

駐車中のデアイシングカー

飛行機の除雪方法には2工程ある

飛行機の除雪には、大きく分けて2つの作業があります。

① デアイシング(De-icing)

機体にすでに付着してしまった雪や氷を取り除く作業です。

専用の「デアイシングカー」と呼ばれる高所作業車が使われ、ノズルから高温の特殊液体を噴射して氷雪を溶かします

車両のブームは自在に伸び、機体の高い位置にもしっかり対応可能です。

機内から撮影したデアイシング作業

★豆知識

デアイシングで散布する液体はお湯と希釈して使用します(写真の白い部分は煙ではなく湯気です)。

その時の気温によって希釈度が変わり、気温が低いほど濃い液体を撒きます。

② アンチアイシング(Anti-icing)

除雪後に再び氷雪が付着しないよう、機体表面に予防のコーティングを行うのがこの作業です

防氷液を散布することで、一定時間機体を氷結から守ります。

どちらも非常に重要な工程で、安全運航の鍵となります。

機内から撮影したアンチアイシング作業

★豆知識

防雪液は効果の持続時間(食べ物でいう消費期限みたいなもの)が決められています。

気温が低ければ低いほど持続時間も短く、滑走路まで行ったのに時間切れで再び駐機場へ戻ることもあります。


特徴と工夫:除雪はスピードと安全が命!

飛行機の除雪作業は、限られた時間の中で迅速かつ的確に行われなければなりません。

冬場の空港では出発便が密にスケジュールされており、除雪に時間がかかるとすぐに遅延が発生してしまいます。

先述の効果の持続時間の問題だけでなく、積み込み中の乗客の手荷物に液体がかかってはいけないので、どうしても出発直前の散布となってしまうのです。

そのため多くの空港では、複数のデアイシングカーを同時に稼働させたり、日本国内ではほとんど使用されていませんが、滑走路脇に専用のデアイシングエプロン(除雪用エリア)を設けて、作業効率を最大化しています。

また、気温や雪の状態に応じて使う液体の濃度を調整するなど、経験と判断力も求められる繊細な作業でもあります。


除雪作業の裏にはプロの技術が詰まっている

飛行機の除雪というと、つい「地味な作業」と思われがちですが、実は航空の安全を守るために欠かせないカッコイイ仕事です。

現場ではグランドハンドリングスタッフや整備士、オペレーターたちが連携し、寒さの中で作業にあたっています。

飛行機が冬でも定時に、安全に空へ飛び立てるのは、こうした人たちの努力があってこそ。

次に冬の空港で飛行機を見かけたときは、ぜひその機体の美しい翼の裏にある「除雪」という支えにも思いを馳せてみてください。

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