【徹底解説】飛行機の「ノーショー」とは?遅刻が招くトラブルと現場の裏側

2025年10月13日にNHKで放送されていた『100カメ』にて、羽田空港で働く人たちの姿がクローズアップされていましたね。

そこで登場した「ノーショー」という航空用語。

「時間になっても搭乗口に来ない乗客」という意味で、エアライン業界ではメジャーな用語ですが、初めて聞いた人も多いのではないでしょうか。

空港で「▲▲便にご搭乗の〇〇様〜当便はまもなく出発いたします」というアナウンスを聞いたことがある人もいるかもしれまん。

実はそれが、ノーショーが発生している事態を指します。

ノーショーは単なる「遅刻」ではありません。

裏ではグランドスタッフやグランドハンドリングスタッフなどの地上係員を含む、あらゆる部署が総出で対応に追われ、飛行機の出発を遅らせることもあるのです。

今回は、普段は見えない「ノーショー」の裏側を、現場経験者の視点で詳しく解説します。

ノーショーとは?

「ノーショー(No Show)」とは、チェックインや保安検査場を通過しているのに搭乗締切時刻までに現れない乗客のことを指します。


どの航空会社でも、出発時刻の15〜20分前には「搭乗締切時刻」が設定されています

この時刻までに搭乗口へ来ないと、搭乗できないことがあります。

なぜなら飛行機の出発時刻」は扉も閉まって搭乗橋も外れて、飛行機が動き出す時刻だからで

出発時刻と搭乗締切時刻の違いについては、コチラで解説しています。

さらに乗客が現れない場合は安全上の理由から、預けた手荷物を貨物室から下ろさなければいけません

これは本人が乗っていないのに手荷物だけが飛行機に載っている状態は、不審物や危険物の可能性があるからです。

なお貨物扱いであれば、持ち主が搭乗していなくても問題ありません。


ノーショーが発生すると、現場で何が始まるのか

グランドスタッフ

搭乗締切が近づくと、グランドスタッフが搭乗口周辺を捜索します。

  • 館内アナウンスで名前を呼び出し
  • 保安検査場や搭乗口周辺を探し回る

ノーショーが多いと最初は便名で呼ばれますが、減ってくると最終的に名指しで呼ばれます。

そうなると、乗れなくなってくる可能性もあります。

もし呼ばれてしまったら、とにかく搭乗口まで急ぎましょう(係員としては、むしろ走ってほしいくらい)。

なぜならひとりの乗客が来ないだけで、出発が大幅に遅れるからです。


グランドハンドリングスタッフ(グラハン)

ノーショーが発生すると、グラハンに無線で指示が飛びます。

〇〇便、手荷物▲▲個を捜索してください

貨物室やコンテナの中には、数十〜百個単位のスーツケースがぎっしり。

その中から該当する一つを探し出し、ラベルを確認しながらピンポイントで取り出す必要があります。

貨物室は狭く、頭をぶつけながら懐中電灯を頼りに探すことも。

1個の荷物を下ろすために、5〜10分、貨物室の奥底にある時は15分以上かかることも珍しくありません。

乗客が見つかれば貨物室に再び搭載しますが、搭乗キャンセルとなれば手荷物は搭載せずに出発します。


なぜそこまで大変なのか?

ノーショーの厄介な点は、機内の安全にも直結すること。

本人不在の荷物を載せたまま出発することは、テロ対策などのセキュリティ上のルールで禁止されています。

つまり、ノーショーは単なる遅刻では済まされず、安全・運航が絡む「重大な事案」なのです。


ギリギリの行動が危険な理由

「搭乗締切時刻」と「出発時刻」を混同している人が多いですが、出発時刻は飛行機が動き出す時間で、搭乗締切時刻はさらに前に設定されています

たとえば国内線では通常、出発時刻の20分前までに搭乗口へ向かうよう、搭乗券にも記載されています。

保安検査や搭乗口までの距離、混雑状況を考えると、国内線でも出発60分前までに空港への到着が理想です。

「空港に着いた=安心」ではなく保安検査を通過して搭乗口前に着くことまで、考慮しましょう。


ノーショーが招く負の連鎖

番組内でも当初19名いたノーショーから、最終的に2名の搭乗キャンセルが発生しました。

2名くらいであれば大きな影響はないですが、仮に19名全員が来なくて手荷物も全員預けていて、さらに小型機の場合には、飛行機の重量バランスを再計算する可能性もあります

そうなるとパイロットにも情報を再送するなど、運航体制全体に影響します。

つまり、たった一人の「遅刻」が、地上係員や乗務員、さらに時間を守って搭乗した他の乗客といった全員に迷惑がかかってしまうのです。

なお搭乗キャンセルとなった場合の手荷物の返却方法は、コチラで解説しています。


ノーショーを防ぐためにできること

① 空港には出発の1時間前を目安に到着

手荷物預かり・保安検査・トイレ・おむつ替えなどを含めると、60分前でも意外とギリギリ。

とくに家族連れや荷物が多い場合は、1時間半前が安心です

② 搭乗券に書かれた「搭乗締切時刻」を確認

出発時刻ではなく、締切時刻が本当のリミットです。

チェックインや保安検査の通過が済んでいても、搭乗口への到着が遅れれば搭乗できません。

③ 呼び出しアナウンスを聞いたら、すぐにゲートへ

「呼ばれている=まもなく出発する」という意味です。

搭乗口まで距離がある空港では、スタッフが遠くまで呼びに来れない場合もあります。


まとめ:ノーショーは1人の問題ではない

  • ノーショーとは、搭乗締切に間に合わなかった乗客のこと
  • 預けた荷物は必ず下ろさなければならない
  • 時間通りに来ない人のために、地上係員が走り回る
  • 出発が遅れれば、他便にも影響する
  • 余裕を持った行動が、結果的にみんなの快適につながる

最後に:余裕を持って空港へ

空港ではいつも何かしらのトラブルが起きています。

地上係員からするとノーショーは珍しいことではありませんが、できれば1件も起きて欲しくありません。

ノーショーを防ぐ一番の方法は、余裕を持って空港に行くこと。

それだけで、あなたも、他の乗客も、そして空で働く人たちも守られます。

次のフライトでは、少しだけ早く家を出てみてください。

それが、快適な空の旅への最初の一歩です。

それでは良い旅を。

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